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まるで猿のような素軽さにびっくりしているうちに、ジローはもうリップを拾い上げていた。そして再び石垣に取り付くと、垂直の壁を手と足の筋肉だけを使ってバランスを保ちながら力強くよじ登ってくる。半袖のカッターシャツの下で筋肉が躍動するように収縮しているのが一瞬見えた。
あっという間に川岸の上まで到達したジローは、私の目の前に立ってフェンス越しにリップを渡してくれた。
「すっごーい、スパイダーマンかと思っちゃった」
私はありがとうを言うことも忘れて、ジローが演じたイリュージョンに感心していた。よほどおかしな顏をしていたのだろうか、ジローが私の顔を覗き込んでニヤリと笑った。私もその笑顔につられるように微笑んだ。
するとジローが不意に真面目な顏をして、大声で叫んだ。
「僕を好きになっても無駄だ!」
突然叱られた私はビクッとして一瞬パニックになった。
(え、なんで怒ってるの? 私なにか気にさわることした? どうして好きになっちゃっダメなの?)
いろんな考えが頭の中を駆け巡った。何もリアクションを取れずにいると、カスミと島田くんが同時に吹きだした。
「なんて顏してんのよチアキ。ジローちゃんにフラれたのがそんなにショックだったの〜?」
そう言われて、自分がからかわれていたことにやっと気がついた。
「映画『スパイダーマン』の名シーンを再現してみました、へへへ」
ジローがおどけて言うと、またチアキが笑った。自分の顏がカーッと赤くなってくるのが分かった。私は恥ずかしいのとムカついたのが一緒になって、ジローの方に向き直ると、
「このぉ! お前が私を好きになれ!」
この逆ギレにはジローも驚いたみたいで、子供みたいに目をパチクリさせていた。
続く
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